SECHS★短篇小説〜君と僕2。

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    『君と僕2』

     

     

     

     

     

     







     放課後、聖架は他の班の子達と一緒に教室の掃除をしていた。

    早く終わらせて帰りたいと、ぼやく子や、丁寧に机を拭く子。聖架はというと…。
     

     

    「涼、今日さあ。涼の家で宿題しねー?」

    「いいよ」

    「あ。俺も!ついでに、涼に勉強教えてもらおっかな」

    「それいい!最近宿題多すぎなんだよなー」

    「うん!じゃあ帰ろう!」

    風見涼と、クラスメイトの男子2人が、一緒に帰っていった。
    あの2人は葉山純(はやまじゅん)と城崎海士(しろさきかいし)の2人だ。
    涼と純は小学校の頃から。海士とは中学になってから仲良くなったようだ。
    聖架は、その2人の事はそこそこに付き合いがある。
    だが、涼と一緒に帰っていく様を見て、あまり面白くは無かった。

    「聖架!ぼーっとしてないで、さっさと掃除してよ!」

    「…分かったよ」

    クラスメイトの女子にそう言われ、さらに面白く無くなった。
    それでも、箒を持った手を動かし始めた。

    (はあ。僕も涼と宿題したい…)

    周りの女子達は、また聖架が涼の事考えてるー!とクスクスと笑っていた。

    周りがはやし立てるのにも、もう慣れた。
    と言うか、涼が傷つかないのなら、それで良かった。
    涼は。
    黒髪で綺麗なグレイの澄んだ瞳をしている。
    少し背は小さめだけど、それでも僕よりはまだ大きいかな。
    僕は予定では涼よりも高くなるつもりだし…。
    涼は凄く頭が良くて、成績も学年でいつも1位だ。
    女子からも好かれているし、男子の友達も多い。
    そんな涼の近くに行きたいのだが、僕の気持ちを知られてからは、
    周りが騒ぐのもあってか、中々近くにいけない。
    昔はよく遊んでいたのに…。
    それに、最近涼に不幸があってから、側で力になりたいと思っているのに、
    やっぱり側へと行けないのだ。…上手くいかない…。



     

     

    「バイバーイ!」

    「また明日―!」

    掃除の終わった班から、次々に帰っていく。

    聖架も掃除を終わらせ、ようやく帰り道に着いた。
    聖架のマンションは、涼の家と途中の道までは一緒だが、その後は反対方向だ。
    ある理由でこの街へ来たのは小学生の頃。
    この街で初めて出来た友達が涼だった。
    聖架は道草をせずに真っすぐ、その分かれ道まで帰って来た。

    そうして。

    「涼の家は向こう…」

    やっぱり、涼に会いに行きたい。で
    も、今押しかけたら迷惑かな…。そんな事を想っていたら後ろから声をかけられた。

    「聖架。こんな所でなにやってるの?」

    聖架は、後ろを振り返った。

    「聖亜か…。今帰りなの?」

    「そ」

    聖亜は聖架の双子の妹だ。
    聖架と同じ茶色の髪をポンパにして、後ろ髪を伸ばしている。

    「まーたこんなところで悩んでる…」

    聖亜は聖架が何で悩んでいるか、お見通しだ。

    「いいだろ。別に…僕が何で悩んでても…」

    「そういうわけにはいかないわね。

    今その暗―い顔のままで家に帰ってこられても、
    私と聖架、2人しかいないのに。こっちまで暗くなっちゃう!」

    「なんだよ」

    「思いつめてる暇があったら、さっさと行ってこれば?」

    「う…」

    「可愛い涼ちゃんが、他の子と仲良くしてるよー?いいのかなー?」

    「い、良いわけないだろ!」

    「あはは、じゃあ行ってこれば?」

    半ば妹に煽られた訳だが、聖架は決心がついたようだ。

    「じゃあ、夕飯までには帰るから」

    「はーい!いってらっしゃーい!」

    にこにこと、笑顔で聖亜は見送ってくれた。

    聖架は、歩き出した。歩いているうちにだんだんと早足になって、気づけば走り出していた。


     

     

     

    ピンポーン。

    「誰か来たみたい。2人とも待ってて 」

    「おう」

    「うーん。やっぱり難しー。なあゲームしていい?」

    「ダメだよ。ちゃんと宿題終わってから」

    「ちぇ」

    涼は、リビングのテーブルで、3人して宿題を広げていた。
    純も成績は上位の方で、スラスラと宿題を終わらせていく。
    海士は、どちらかというと勉強は苦手で、頭を使うよりも、身体を動かす方が得意だった。
    もう宿題には飽きていて、涼の家に置いてあるゲーム機で遊ぼうと、
    意識を向けていた。涼はすっと立ち上がり、玄関の方へと向かった。

    「はーい」

    「…こんにちは」

    「聖架!…どうしたの?」

    「あ…。その…」

    意気込んで来たものの、実際に涼を目の前にすると、
    前ほど上手く喋れていない自分に気づいた。そんな聖架を見て、涼は。

    「上がってく?純と海士が来てて、一緒に宿題してるんだ。聖架も一緒にする?」

    可愛い顔でそう聞かれて、聖架はますます緊張してしまいそうだった。
    でも、涼のお誘いに、聖架は満面の笑顔になっていた。

    「うん!」

    聖架の返事を聞いて、涼は聖架を出迎えた。

    (涼…優しい…。前に戻ったみたいだ。やっぱり来てよかったな)

    聖架は涼の後ろをウキウキしてついていった。

    「お待たせー。聖架が来たよ!」

    「あ!聖架だ!」

    「うわ!聖架じゃん!」

    約1名の反応が気にはなったが、それでも純と海士は笑顔で迎え入れてくれた。

    「みんな、どの宿題してたの?僕もするよ!」

    「おー」

    「あ、そういえば明日俺当てられそうなんだよ!やべー!ゲームしてる場合じゃなかった!」

    「あはは」

    聖架は自然とみんなと仲良く過ごしていた。

     

     

     

    「あ!みんなもうこんな時間だよ」

    「ホントだ」

    「マジだ!くそー、宿題は出来たけど、今日全然遊べなかったじゃん!涼、今度は遊ぼうな!」

    「うん」

    純と海士が片付け始めた。
    聖架はまだ涼と一緒に居たかったけど、今日は帰ることにした。

    涼が3人を玄関まで送る。

    「ありがとう。純、海士。今日は楽しかったよ」

    「ああ、じゃあまた明日な。涼!」

    「じゃあな!」

    「ばいばい」

    純も海士も途中まで一緒に帰っていった。
    聖架は2人が行くのを少し待って。涼と2人になった。

    「涼」

     「何?聖架」

    涼の方からは何も言わない。

    「聖架。久しぶりに遊んだね」

    「うん…」

    (勇気を持つんだ、僕…)

    「涼…。最近どうしてたの?」

    「ん」

    「涼…今、1人なの?」

    「…」

    「僕…君の為なら何でもするよ。力になりたいんだ」

    聖架は最後の言葉は力を込めて伝えた。

     「聖架…ありがとう。でも、俺…」

    涼は少し俯いたが、すぐに聖架の顔を見た。

    「俺…今、1人じゃないよ」

    「え…」

    「…ありがと…聖架…俺、大丈夫だよ」

    「涼…」

    聖架はそれ以上は聞けなかった。

    本当に涼は優しい笑顔でそう答えてくれた。
    涼の笑顔を見ていたら、それ以上聞かないでとも思えたし、
    今は本当に大丈夫なんだとも思えた。
    聖架には、まだその涼の笑顔の答えは分からない。
    それでも。聖架は涼を信じることにした。

    「涼…僕、いつでも力になるよ!本当に。じゃあ、また明日。学校でね…!」

    聖架はそれだけ言って、走った。
    途中、涼の方を振り向いて手を振った。
    涼もまた、聖架が見えなくなるまで手を振ってくれていた。

    「ありがと…聖架」

    涼は聖架が見えなくなってから、少し空を見上げた。
    もう日が落ちかけて、いて空は綺麗な夕焼けのグラデーションを創っていた。


     

     

     聖架は帰り道、急いでいたわけでもないのに、走っていた。
    走りたい気分だった。何だか自分が知らない涼がいる気がして。
    さわさわした。それでも、昔と変わりない、
    いや昔よりももっと優しいような笑顔を見せてくれた涼。
    近づきたいのに近づけない、そんな感じだ。
    それでも、また明日学校で会える。その時はまた。
    君は同じ笑顔を見せてくれるだろうか?

    「また明日…涼…」

    聖架は空を見上げた。もう星が輝き始めている。
    早く明日にならないだろうか。近くて遠い君に。早く逢いたい。




     

     

     

     

     

                                   F顳




     

     

     

     

     

     

    君と僕1



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    SECHS1★短篇小説〜午後の時間〜後篇。

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      本日の更新は小説です(*^^*)


       

       

       

       

      午後の時間ー前篇ー

       

       

       

      『午後の時間ー後篇ー』


       

       

       

       

       

       サイフォンの街は住宅街と街の中央にある市場。
      その市場に続くタービットの酒場兼食堂や楽器屋、小さい武器や防具、
      装飾品などの扱いのある店もある。
      そしてこのレガント星のギルド機関ファナイリファビリティーの連絡網として小さな窓口がある。
      窓口と言っても人はおらず、
      モニターとギルドの者でしか扱いが分からない機械が置かれている。
      街にはポストがあり、郵便屋がちゃんと手紙を取りに来てくれる。
      道は広く、住民達によって綺麗に掃除されている。
      レッチェと涼は街の北側にあるSECHS(ゼックス)ハウスから歩いてやって来た。

      「どうする、食堂へ行く?」

      「そうだな。俺はそんなにお腹すいてないけど」

      「じゃ、行こ」

       
       

      「いらっしゃい!」

      「こんにちは」

      「ちは」

      「お、レッチェに涼か!今日は何にする?」

      2人はタービットの酒場へとやって来た。夜は酒場、昼は食堂になる。
      広々としたフロアに椅子とテーブルが整然と並んでいる。
      何人かの客が少し遅いランチやお茶をしていた。
      レッチェと涼はいつものカウンターの席へと座った。

      「レモネードで」

      「俺も同じので。それからチョコレートドーナツも」

      「はいよ」

      タービットの酒場には昼はタービットとウエイトレスのリリーがいるのが常だ。

      「ねえ、2人とも」

      「こんにちはリリーさん」

      「何?」

      「最近近くに洞窟が発見されたんですって」

      「洞窟?」

      話しかけて来たリリーは意外な事を言った。

      「知らなかったでしょ!」

      「それで、どんな洞窟?」

      涼は興味津々だ。

      「まだ誰も踏み入れたことのないそうなの。きっとお宝があるわよ」

      レッチェは怪訝な顔をして、カウンターに肘をついた。

      「誰も入ったことがないのに、何で宝があるって分かるわけ?」

      「あら、そういうものでしょ!」

      「はあ」

      ため息と共に隣に座っている涼を見ると、涼の目がきらきらしている事に気づく。

      「涼ちゃん?」

      「何?」

      「何か嬉しそうだね」

      「ええ!?レッチェは興味無いの?」

      「そんなの。あるわけ無いだろ。大体お宝―なんて」

      「ははは!SECHSさんは稼いでらっしゃるからなあ!」

      「タービットさん!」

      おまたせと、タービットは料理を2人の目の前に置くとともに、あっけらかんと口にする。
      その言葉に嫌味はなく、タービットにとってはむしろ、子供ながらに凄いものだと、感心していた。

      「涼、何も驚く事はない。この街の連中はみんな知ってることさ!」

      咎めようとした涼は、逆に照れてしまった。

      「それより、食べよ」

      レッチェは関心が無いようで、レモネードを口に含んだ。

       
       

      「ごちそうさまでした」

      「おう、また来てくんな!」

      「じゃあねー!2人とも!」

      レッチェは少し振り向き、涼は手をふって、2人はタービットの酒場を後にした。また街を歩き始める。

      「ねえ、本当に興味無いの?」

      「何が?」

      「さっきの、洞窟だよ」

      「ああ、あれね」

      レッチェは頭の上で腕を組んだ。

      「興味無いっていうか、宝っていうのがね」

      「嘘だと思う?」

      「そんな簡単に見つかるものじゃないし。本当にこの辺にあると思う?」

      「あるかもしれないよ?」

      それでもレッチェは同意してくれない。

      「ほら、失われた宝、とか」

      涼の言葉にレッチェは笑ってしまった。

      「涼」

      「失われた宝のある洞窟だから名前は失われた洞窟だよ!決まり!」

      「そんなの、安直過ぎ」

      「他にいいのがある?」

      「そりゃ……失われた財宝の方が響きはいいかな」

      「それじゃ、失われた財宝の眠る、失われた洞窟だね」

      「なにそれ」

      レッチェは可笑しくて笑っている。

      「おかしいよ」

      「ええ!?いいと思うんだけど…」

      真剣な親友の言葉に、少し笑うのをやめて。

      「分かった、分かったよ。じゃあそれで」

      からかいまじりのレッチェに膨れそうになりつつも、涼は納得したようだ。

      「今度、行ってみない?」

      「本気?」

      「うん」

      レッチェは少し目を泳がせ、涼に返事をする。

      「じゃあ……今度ね」

      「絶対だよ!」

      「いつになるか分かんないけど!」

      そう行って、走り出したレッチェ。

      「あ、待ってよ!」

      涼もつられて後を追う。

      「そういえば、俺寄りたい所があったんだ」

      「どこ?」

      「マイロの装飾屋さん。新しい生地が入ってないかなーって」

      追いついて普通に歩いている涼。

      「いいよ、行こ」

      「ついでに涼ちゃんに似合いそうなのも見てやるよ」

      2人はマイロの装飾屋へと足を向けた。
      レイ(6惑星の熱源体)はすでに落ちつつある。2人の影も伸びつつある時間帯。
      まだ帰りそうにない2人は、話足りないとばかりに話をしている。
      サイフォンの街にも、もうすっかり馴染んでいる。
      ひとときの安息の午後の時間はもう少し続きそうだ。

       

       

       

       

       

      Fin

       

       


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      SECHS1★短篇小説〜午後の時間〜前篇。

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        本日2度目の更新は短篇小説です(*^^*)

         

         

         


        『午後の時間ー前篇ー』

         

         

         

         

         今、SECHS(ゼックス)ハウスにはレッチェと涼がいる。
        涼が学校から帰ってきて、この日は珍しく仕事を入れていないレッチェが、
        やはり珍しくソファではなく、リビングのカーペットに丸くなって寝転がっている。
        長い、透き通る青い髪を散らばらせて、目を閉じていた。
        黒く体のラインを拾う長そでのトップスと黒の皮のパンツを穿いている。
        そんなレッチェの隣には涼がいた。
        黄色い半そでのパーカーに、カーキ色のサファリパンツを穿いている。
        黒いさらさらのショートヘアを少しかき上げ、ぼんやりとした時間を過ごしていた。

        「レッチェ」

        名前を呼ばれたレッチェはううんと少し身じろぎした。

        「こんな所で寝てたら風邪ひいちゃうよ?」

        なおも起きようとしないレッチェを見かねて、
        涼は自分の部屋からベージュ色の毛布を持ってきて、レッチェにかけてあげる。
        レッチェは寝心地がさらに良くなったのか、また身じろぎをした。

        「クス」

        涼はそんなレッチェが可愛らしく思え、

        (猫みたい)

        本人が聞いたら、機嫌を損ねそうだと思いさらに可笑しくなった。
        それでも話相手が寝てしまってはと、
        勉強でもしようと持ってきていた鞄の中から参考書とペンケースを取り出す。

        (今日は数学でもしようかな)

        今やっているのは、球の体積の求め方。

        (球の体積は3分の4πrの3乗で…)

        成績優秀な涼は、合間の時間も勉強に当てている。
        でもゲームが好きで、涼の家にはゲーム機が沢山あった。

        カリカリ。

        リビングに涼のシャーペンの音が走る。
        相変わらず、レッチェは静かに眠っているし、涼は参考書に夢中になっている。
        涼にとって、有利な事は勉強が苦ではなかったということだろう。
        覚えるのも考えるのも大好きだ。
        何か分からないことが出てきたら、その答えを導きだすのも好きだった。
        集中して問題を解いていると、ふっと視線が気になった。
        レッチェが仰向けに寝転びながら(相変わらず丸まっている)涼の事をじいっと見ている。

        「あ、起きたの?」

        涼の問いは無視して、レッチェは今度は横を向いた。

        「涼ちゃん、暇なんだけど…」

        「今まで寝てたくせに」

        「起きてたよ」

        「寝てただろ」

        「起きてた」

        押し問答になる前に、レッチェは毛布から出てきて、涼の隣に座る。

        「ほら、起きてる」

        「もう」

        レッチェは腕を伸ばしながら、身体を整えた。

        「勉強はいいから、遊びに行こうぜ」

        「調子いいなあ」

        涼はそう返事を返す代わりに、参考書をまた鞄の中に片付け始めた。
        SECHSハウスの近くのサイフォンの街に出かける用意を着々と始める。

        「何か食べる?」

        「とりあえず、行ってからで」

        「いいよ」

        2人はリビングから出て、出かけていった。外は熱帯地域特有の暖かな気候だ。
        その中をレッチェと涼は話ながら歩いていく。空は快晴。これから暑くなりそうだ。

         

         

         

        To be continued

         

         

         

         

        午後の時間ー後篇ー

         

         

         

         

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        SECHS1★短篇小説〜夕焼け。

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          『夕焼け』

           

           

           SECHSハウスの近くの浜辺。

           

          夕焼けの中、オリビアはテオルと共に砂浜を歩いている。

          まだ十九歳前の彼は、金の髪を無造作に短くしていた。

          黒いジャケットを羽織り、黒のトップスにジーンズ姿だ。

          砂に埋もれることなく、しっかりとした足取りではあるが、どこか力が抜けているようにも見えた。

           

          その半歩後ろを、テオル。こちらは長い銀の髪を一直線に切り揃え、白でまとめた衣服を着ている。

          裾の長い白のコートに砂一粒も付いては居ない。

          よどみのない足取りで、オリビアの傍にぴったりとついている。

           

          もうすぐ秋の季節になろうとしているが、

          SECHSの拠点のあるこのレガント星のスウェード地方は、一年を通して温暖な気候であるため、

          あまり寒暖差を感じさせなかった。

           

          それでも空は秋の様子を伺わせ、雲が舞い踊っている。

          まだ青空が見える所もあるが、いわし雲と海面が、レイ(六惑星を照らす熱源体)に照らされ、

          赤く染まっている。海はどこまでいっても穏やかで、波音を空へ向けて静かに響かせていた。

           

          その海を見ながら、オリビアは足を止めた。

          立ち止まり、身体はそのままで首だけを横に向け海を見た。

           

          「……」

          テオルからはオリビアの顔を見ることは出来なかったが、

          その瞳の先を見つめるかのように、またテオルも海に目をやった。

           

          「静かだ…」

          「本当に」

           

          今度は身体を向けて、オリビアは息を吐いた。

           

          「…こんなにも静かであるのにな…」

          「……」

          テオルにはオリビアの心が分かっていた。この海の静けさとはオリビアの心が異なっていることも。

           

          「ふ……赤く燃える炎のようだ。あの時の様に」

          「マスター」

          テオルはオリビアの事をそう呼ぶ。

          昔からだ。自分がオリビアの守護をしていることをわきまえている。

          オリビアが自分の主であると共に。

           

          「あの時の様だとは私は思いません」

           

          オリビアが何も言わないのを知っていて、テオルは続ける。

           

          「あの時の恐怖と不安は、今ここにはないのですから」

          「……」

          「そして今はまだ、その時でもありません」

           

          テオルはそれ以上は言うつもりが無い様で、オリビアの横顔を見つめた。

           

          「あの男を……」

          「勿論です」

          オリビアもまた、それ以上は口にすることは無く、そのまま静かに瞳を海から空へと向けた。

          真っ赤に。燃えるような赤い空は、あの時を思い出す。

           

          目を閉じると、その光景がありありと浮かんでくる。

           

          オリビアはあえてそうすることを避けた。

          今、この静けさを、時にはほんのひと時、自分に許されるような気がして。

          だがすぐその気持ちは消え去った。

           

           

          「……まだ感傷に浸るには早すぎる…」

          オリビアは独り言ちた。テオルは肯定も否定もしない。

          ありのままのオリビアをただ受け入れるだけだ。

           

           

           

          先ほどより少しレイが沈みつつある。もうすぐ世界も夕闇に支配されるだろう。

          そんな時、一人の女の子の声が聞こえてきた。

           

          「オリビアー!テオル―!」

          「にゃん!」

           

           

          オリビアが見ると、黒髪を腰まで伸ばした少女が、愛猫のクロと一緒に走って来ていた。

           

          「二人とも、お夕飯だよー!早くー!」

          少女は途中、砂に足を取られそうになり、転びかけ、また走り出す。

          クロはその周りを泣きながら、高く飛んだり跳ねたりしている。

           

           

           

          「…不思議だ。今の状況もそうだが…そうは思わないか?」

          「ええ…ですがあの娘は」

          「ああ。だがかまわない」

          オリビアとテオルの言葉は少女には届いていない。

          ぴょんぴょん飛びながら、駆けてくる。そうして二人の前までやって来た。

           

           

           

          「お夕飯だよ!」

          「ああ。…紅、砂まみれだな」

          「あー!本当だ!」

           

          紅は自分の姿を観ようとくるくる回っている。

          一緒にクロも回りだす。そんな紅の頭を、オリビアはよしよしと撫でた。

          「えへへ」

          紅はにんまりとした。

           

          「行こう」

          「うん!」

          オリビアはまた歩き出した。

          テオルもその半歩後ろを再び歩く。

          紅は少し遅れたものの、早歩きをしてオリビアの隣に並び、

          今日のディナーのメニューを口早に話していく。

           

          「ね!美味しそうでしょ?」

          「そうだな」

          それを聞いて、紅はオリビアとテオルに早く早くと、急かしている。

           

           

           

          オリビアはもう夕焼けの方には目を向けなかった。

           

          夕焼けを見ても、見なくても、今はまだあの時のことを忘れることは無いのだから。

           

           

           

           

          Fin

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

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          SECHS★短篇小説〜君と僕1。

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            すがすがしい、朝。
             
            梅雨の季節の合間に見る、晴れ間。
             
            少しの雲がゆっくりと空を流れている。
             
            子供達はもう夏の装いで、外で元気に遊んでいる。
             

            待ち合わせの時間。
             
            ふと、1人の少年は今日の遊び相手の事を思った。
             
            少年――聖架は、少し気が早やっている。
             
            梅雨独特の蒸し暑さも相まって、少し顔も汗ばみ始めた。
             
            相手はいつも学校で顔を見ている相手だ。
             
            その子の笑顔を思うだけで、自然と胸が高鳴った。
             
            教室では窓際に席がある、
            その子の綺麗な癖のないさらさらの黒髪が風に揺れている様。

             
            集中して授業を聞き、ノートにペンを走らせる。
             
            聖架はその子より、少し右斜め後ろの席。
             
            先生の話を聞くよりも多く、その子を見つめている。
             
            そのせいだろうか。
             
            周りにはやし立てられてしまい、その子とも少し距離が出来てしまった。

             

            気にしていなければいいけれど。

             

            そんな風に思い、待ち時間を過ごす。

            待ち合わせの15分前。

            それでも、少し自分のせいでと、申し訳なくも思った。

            視界が狭まりそうだと、視線を広げた。
             
            ふと。
             
            目にとまったのは、いつもの通りの花屋さん。
             
            花は好きだった。
             
            双子の妹が、よく花を食卓のテーブルに飾っている。
             
            いつも食事の時は、いい香りがしているのだ。
             
            聖架は、思うがより早く行動を起こしていた。





             
            「おはよう!聖架!」
            「おはよう!涼!」
            「ごめん、待った?」
            「ううん。全然」

             
            待ち合わせ5分前。
             
            聖架は、涼がちゃんと待ち合わせ場所に来てくれただけで嬉しかった。
             
            自然と笑顔になった。
             
            君に会えただけでも、今日が最高の1日になることを予感していた。

            「はい」
            「花?」

             
            聖架はそっと、涼に薔薇一輪を差し出した。
             
            「どうしたの?」
            「涼にプレゼント」
            「ええ?俺、今日誕生日じゃないよ?」
            「涼にプレゼントしたくなったんだよ」
            「変な聖架。ありがとう」

             
            涼はくすくす笑い、聖架からの花を受け取った。
             
            「いい香りだね」
            「うん」

             
            聖架はさらに優しい笑顔になった。
             
            「じゃ、行こうか」
            「うん!」

             
            今日は久しぶりの2人きり。


            さあ、どこへ出かけようか?





            END


             

             

             

             

             

             

             

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