SECHS1★短篇小説〜夕焼け。 | チームSECHS!

SECHS1★短篇小説〜夕焼け。

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    『夕焼け』

     

     

     SECHSハウスの近くの浜辺。

     

    夕焼けの中、オリビアはテオルと共に砂浜を歩いている。

    まだ十九歳前の彼は、金の髪を無造作に短くしていた。

    黒いジャケットを羽織り、黒のトップスにジーンズ姿だ。

    砂に埋もれることなく、しっかりとした足取りではあるが、どこか力が抜けているようにも見えた。

     

    その半歩後ろを、テオル。こちらは長い銀の髪を一直線に切り揃え、白でまとめた衣服を着ている。

    裾の長い白のコートに砂一粒も付いては居ない。

    よどみのない足取りで、オリビアの傍にぴったりとついている。

     

    もうすぐ秋の季節になろうとしているが、

    SECHSの拠点のあるこのレガント星のスウェード地方は、一年を通して温暖な気候であるため、

    あまり寒暖差を感じさせなかった。

     

    それでも空は秋の様子を伺わせ、雲が舞い踊っている。

    まだ青空が見える所もあるが、いわし雲と海面が、レイ(六惑星を照らす熱源体)に照らされ、

    赤く染まっている。海はどこまでいっても穏やかで、波音を空へ向けて静かに響かせていた。

     

    その海を見ながら、オリビアは足を止めた。

    立ち止まり、身体はそのままで首だけを横に向け海を見た。

     

    「……」

    テオルからはオリビアの顔を見ることは出来なかったが、

    その瞳の先を見つめるかのように、またテオルも海に目をやった。

     

    「静かだ…」

    「本当に」

     

    今度は身体を向けて、オリビアは息を吐いた。

     

    「…こんなにも静かであるのにな…」

    「……」

    テオルにはオリビアの心が分かっていた。この海の静けさとはオリビアの心が異なっていることも。

     

    「ふ……赤く燃える炎のようだ。あの時の様に」

    「マスター」

    テオルはオリビアの事をそう呼ぶ。

    昔からだ。自分がオリビアの守護をしていることをわきまえている。

    オリビアが自分の主であると共に。

     

    「あの時の様だとは私は思いません」

     

    オリビアが何も言わないのを知っていて、テオルは続ける。

     

    「あの時の恐怖と不安は、今ここにはないのですから」

    「……」

    「そして今はまだ、その時でもありません」

     

    テオルはそれ以上は言うつもりが無い様で、オリビアの横顔を見つめた。

     

    「あの男を……」

    「勿論です」

    オリビアもまた、それ以上は口にすることは無く、そのまま静かに瞳を海から空へと向けた。

    真っ赤に。燃えるような赤い空は、あの時を思い出す。

     

    目を閉じると、その光景がありありと浮かんでくる。

     

    オリビアはあえてそうすることを避けた。

    今、この静けさを、時にはほんのひと時、自分に許されるような気がして。

    だがすぐその気持ちは消え去った。

     

     

    「……まだ感傷に浸るには早すぎる…」

    オリビアは独り言ちた。テオルは肯定も否定もしない。

    ありのままのオリビアをただ受け入れるだけだ。

     

     

     

    先ほどより少しレイが沈みつつある。もうすぐ世界も夕闇に支配されるだろう。

    そんな時、一人の女の子の声が聞こえてきた。

     

    「オリビアー!テオル―!」

    「にゃん!」

     

     

    オリビアが見ると、黒髪を腰まで伸ばした少女が、愛猫のクロと一緒に走って来ていた。

     

    「二人とも、お夕飯だよー!早くー!」

    少女は途中、砂に足を取られそうになり、転びかけ、また走り出す。

    クロはその周りを泣きながら、高く飛んだり跳ねたりしている。

     

     

     

    「…不思議だ。今の状況もそうだが…そうは思わないか?」

    「ええ…ですがあの娘は」

    「ああ。だがかまわない」

    オリビアとテオルの言葉は少女には届いていない。

    ぴょんぴょん飛びながら、駆けてくる。そうして二人の前までやって来た。

     

     

     

    「お夕飯だよ!」

    「ああ。…紅、砂まみれだな」

    「あー!本当だ!」

     

    紅は自分の姿を観ようとくるくる回っている。

    一緒にクロも回りだす。そんな紅の頭を、オリビアはよしよしと撫でた。

    「えへへ」

    紅はにんまりとした。

     

    「行こう」

    「うん!」

    オリビアはまた歩き出した。

    テオルもその半歩後ろを再び歩く。

    紅は少し遅れたものの、早歩きをしてオリビアの隣に並び、

    今日のディナーのメニューを口早に話していく。

     

    「ね!美味しそうでしょ?」

    「そうだな」

    それを聞いて、紅はオリビアとテオルに早く早くと、急かしている。

     

     

     

    オリビアはもう夕焼けの方には目を向けなかった。

     

    夕焼けを見ても、見なくても、今はまだあの時のことを忘れることは無いのだから。

     

     

     

     

    F顳

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

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