SECHS1★長篇小説第11話*12話*13話〜プリンセス・ティレイサ11*12*13。

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    『プリンセス・ティレイサ』1はこちら


    『プリンセス・ティレイサ』2はこちら


    『プリンセス・ティレイサ』3はこちら


    『プリンセス・ティレイサ』4はこちら


    『プリンセス・ティレイサ』5はこちら

    『プリンセス・ティレイサ』6はこちら


    『プリンセス・ティレイサ』7はこちら

    『プリンセス・ティレイサ』8はこちら


    『プリンセス・ティレイサ』9はこちら


    『プリンセス・ティレイサ』10はこちら
     

     

     


    プリンセス・ティレイサのイラストはこちら


    SECHSメンバーティレイサのイラストはこちら



    今回あります(*´▽`*)

    長いのでゆっくりとお読みくださいませ(*^^*)


     

     

    11話。




     少しばかり長い廊下を、執事は主人のもとへと黙々と歩いていく。
    ティレイサはオリビアの言葉が気がかりだった。
    ふと隣を歩くレッチェを見る。
    レッチェは執事を見ている様に見えたが、ティレイサが自分を見ていると気付き、
    ティレイサの方を安心させるように、目を向けた。
    「オリビアの言葉が気になる?」
    「え、ええ」
    レッチェはお見通しのようだ。
    「ティレイサ、君はここへ王の為に来たと思っているの?」
    「…いえ」
    「そうだよね。君は分かってる。ディレーがどんな人物か。見極めるために来たんだろ?」
    ティレイサは頷く。
    「だったら、俺はそれを邪魔するものを排除する。君を守るよ」
    「レッチェ…」
    それは仕事の内の事だろうと分かってはいても、
    ティレイサはレッチェに少しずつ惹かれ始めているようだ。
    だが今は目の前の。自分の初めて会う婚約者のことを考えねばならない。
    ティレイサの王がいる城の雑木林を抜けて、さらに奥の森の中。
    強固な門構えを備えた、大きな屋敷に、使用人達と暮らしているディレー氏。
    オリビアはティレイサの事を知らないわけでは無いと言っていた。
    (もしかしてどこかで会ったことがあるのかしら?)
    ティレイサが考えているうちに、どうやら目的地についたようだった。
    「ここです」
    執事は扉の前に立った。
    「いい?姫」
    「ええ」
    執事はその扉を開けた。
     
     
    広い部屋の中には、大きな食卓テーブルと椅子が向かい合わせに12脚並んでいる。
    テーブルには白いユリの花を基調として、小さいいくつかの花と添えられていた。
    そしてテーブルの1脚に、1人の男が座ってこちらを見ていた。
    「姫」
    男は言葉を発した。男の歳は28歳くらいといったところか。
    薄い灰色がかった切りそろえられた短い髪に、鼈甲色の瞳を柔らかくティレイサへと向けた。
    白いシャツに黄色いタイ、ベージュのベストをまとい、
    それと揃いでベージュのパンツを穿いている。そして黒の革靴を履いていた。
    男は続ける。
    「よく来てくれたね。私はディレー・カードック」
    「あなたが、ディレー様」
    「そうです」
    姫は一礼した。
    「申し遅れました。私はティレイサ・サンドウェルと申します。彼は」
    「レッチェです。姫の護衛です」
    ディレーは頷き、
    「姫、レッチェさん。どうぞ掛けてください」
    2人はディレーに促されるままに椅子へと座った。姫はディレーを見つめた。
    (この人が。父が婚約者と決めた人)
    レッチェはティレイサの隣に座っている。レッチェもディレーを見た。
    「ティレイサ姫。ここへ来てもらったのも他でもない。
    君のお父上の事で、少し話を聞いたのでね」
    「父の事、ですか?」
    「そうなんだ。だが、それは口実だよ」
    ディレーは続ける。
    「成長した君に会ってみたくなったんだ」
    「!…やっぱり、お会いしたことがあるのですね」
    「君が覚えていないのも無理はないかもしれないね。まだ君は幼い頃だ」
    (そんな昔に…でも、どこかで会ったような…)
    ディレーは、ティレイサの様子を見て、ふっと笑った。
    それを見て、ティレイサは慌てて話を戻そうとする。
    「父の事というのは…」
    「君のお父上、王が今困っていると小耳に挟んだ。城の事でね」
    「…それは」
    「私は慈善事業家では無いが、お父上とは知らない仲ではない。
    と言うより、昔世話になったことがあるんだ」
    「父上に?存じませんでした」
    「それは構わないんだ。ただ、出来ることなら助けになりたくてね」
    「そんな……でも、本当に?」
    ティレイサにとっては、初めて聞かされる事ばかりだった。
    だが、城を、父を救えるかもしれないと、少し心が揺らいだ。
    「それには、何か条件が?」
    ティレイサは何とか言葉を発した。
    「いや、君とこうしてまた再会出来ただけで十分だ」
    ティレイサはあっけに取られた。いくら姫でも、急に、
    それもこんなに助けになる話を、何も無くあるだろうか?と。
    「ディレーさん」
    呆然としているティレイサに代わって、レッチェは尋ねる。
    「本気で言ってるの?」
    それも単刀直入に。
    「レッチェさん。勿論本当だよ。これでも…」
    ディレーが喋ろうとした時、部屋に声が飛んできた。
    「ディレー、その辺にしておいたらどう?」
    「ど、どなたですか?」
    現れたのは、1人の女だった。
    金髪をカールボブにし、袖にレースがあしらわれている
    セミフォーマルの黒のドレスを身にまとっている。スレンダーな美人だった。
     
    「あら可愛いお嬢ちゃん達だこと」
    「あなたは?」
    姫は突然現れた女性に動揺した。
    「悪いけど俺、男なんだけど」
    「あら、それはごめんね」
    女性はディレーの元へと近寄り、しなり寄った。
    「ヴァレッタ、どうしたんだい?」
    「ふふっ、あんたの帰りが遅いから迎えに来たんだよ」
    「今、大事な話をしているんだ。向こうへ行っていてくれないか」
    「いえ!お邪魔な様なので私達が帰ります!行きましょう、レッチェ」
    「ま、待ってくれティレイサ姫!」
    ティレイサは一目散に扉へと向かった。
    「…じゃーね、ディレーさん」
    レッチェは部屋を出る最後に2人を見た。
    ヴァレッタと呼ばれた女から魔神力を感じ取りながら。
     

    「待ちなよ、ティレイサ」
    「待てません!」
    明らかに怒っている。ティレイサはツカツカと足早に
    SECHSメンバーのいる部屋へと急いだ。
    レッチェはティレイサの目の前に立ちはだかって、ティレイサの足を止めさせた。
    「!レッチェ、私は帰りたいの!邪魔しないで!」
    「何怒ってるの?」
    「いいでしょ!放っておいて!」
    「ティレイサ、俺の話をよく聞いて」
    「何よ!」
    「ディレーは悪い男じゃなさそうだ。何ていうか」
    「何?」
    「悪どい人間じゃないと思う」
    「…それが何だと言うの?」
    「あの女の人が来るまでの、ディレーの言葉は。きっと真実だよ」
    「………」
    そこまで言われて、ティレイサはようやく落ち着いた。
    「でも、とっても素敵そうな女性がいるわ」
    「そうとは限らない」
    「え?」
    「人は見た目じゃない。いや、あの女の人は見たままかもしれないけど」
    「レッチェ」
    「ティレイサの護衛ってことだから。まあ、任せてよ」
    レッチェはティレイサに、にっと笑った。
     
     

     

     

     

     

     

     
    12話。

     




     ディレーの屋敷の客間にて、オリビアは紅とレディア、
    そしてテオルにティレイサとディレーの事を話した。

    「なるほどー」

    「じゃあディレーさんは、その時ティレイサに一目惚れしていたという事ね」

    「どこかの誰かと同じなわけですね」

    棘のあるテオルの言い方は構わず、レディアは続ける。

    「じゃあ、この結婚って、最初から仕組まれていたのね…」

    「ええ!?そうなの?」

    「だって、そうじゃない?これで王様の思惑通りね。
    姫は理想の男性と結婚し、城も安泰だわ」

    「おや、ディレーは理想の男性なのですか?」

    「姫は恋をしたいと言っていたわ。
    なら初恋の相手ならとっても良いと思うわ。ね、オリビア」

    テオルは少しばかりおかしそうに。

    「ディレー氏は押しかけてこられたわけではないですし、本望かもしれませんね」

    「誰の事を言ってるのかしら?」

    「よせ」

    オリビアは今にも始まりそうなくだらない喧嘩を止め、話を進める。

    「王は、最終的には姫の判断に任せるそうだ。後は姫の心次第だ」

    「ディレーもやり手だとは聞いていたけど、王の方も意外と食わせ物だったようですね」

    にっこり笑うテオルを一べつし、オリビアは扉の方を注視する。

    「姫の決断の前にすることがありそうだ」

    客間の扉がスッと開かれる。一同はそちらに視線を向けた。

    「初めまして、SECHS(ゼックス)の皆さん」

    「あ!おじさん!」

    「おじさんではありませんよ。私の名は烏瑪(からすめ)
    皆さんにお会いできて光栄です」

    烏瑪はシルクハットを取り挨拶をする。

    「あなたね!姫を狙ったのは!」

    「はい。我が主の命で仕方なく。私も心が痛いのですよ。
    あのような何の力もないお嬢さんを狙うのは。しかしあなた方は別だ」

    烏瑪は流暢にしゃべりながら、シルクハットを胸の前でとめる。

    「屋敷の中で戦うの!?」

    「ええ、ここは私の屋敷ではありませんから」

    「身勝手な人ね!」

    レディアの言葉も聞き終わらずに、烏瑪は事を仕掛ける。
    客間の壁から土の魔獣グレートアシェを1体出現させた。
    前に紅と戦った時は2.5メートルほどあった身長が今度は横に広く形を変え、
    襲い掛かってくる。
    オリビアは躊躇わずに、頭をパンっと蹴り上げる。
    グレートアシェはもろくも、頭を取られるが、再び形を成して頭を作った。

    「土人形が」

    「甘く見ないでもらいたい。今度は前の様にはいかないよ」

    グレートアシェは、オリビアの足を掴み、
    己の土を硬化させそのまま破壊しようとする。
    そのグレートアシェの手をテオルはスパっと一刀した。

    その取れた手がまた、大きく変形していく。

    「大地の魔獣だ。この地ある限り、どこへでも存命する」

    「これはこれは」

    テオルは2刀の内の1刀を素早く振るった。
    みじん切りにされるグレートアシェは、その数だけを身体にして復活しようとしたが。

    「灯を」

    オリビアが、少しばかりの輝きを放ち、グレートアシェの身体にだけ炎が燃え移る。

    「何!?」

    烏瑪が驚く間も、その炎が収束するに従って、
    グレートアシェの身体は炎に吸収されやがて塵となって消えてしまった。

    「バカな…」

    「まったく」

    オリビアは太ももに付いた砂ぼこりを払いつつ、烏瑪に詰め寄る。

    「こんな所で火遊びさせないでくれ」

    「き、貴様…」

    「お前の主はどこにいる?」

    烏瑪は問われていることには答えず、自らの身を案じるよりも先に言葉が出る。

    「今のは魔法。威力は小さいが、貴様…!カルテアの…!あの滅びの星の…!」

    オリビアは烏瑪に平手打ちを食らわせ、正気に戻させる。

    「ひっ!」

    「もう一度聞く。お前の主はどこにいる?」

    「い、今!」

    「?」

    「今すぐとは言わない!だが、貴様たちを必ず倒すお方を見つけて見せる!」

    「マスター」

    テオルはオリビアに烏瑪を離させた。

    「もう放っておきましょう。
    それより、先ほど魔人力を感じました。
    この屋敷にこの男の主がいるのでしょう。
    レッチェがついているとはいえ、姫だけではなく、今はディレーも守らねばなりません」

    オリビアは烏瑪を離してやる。

    「おじさん、またやられちゃったね」

    紅は烏瑪に優しくしてやるが、烏瑪は余計に気が滅入った。

    「ふ、ふふ」

    「な、何?」

    烏瑪の不敵な笑いに、身じろぎするレディア。

    「いいでしょう。今回は私の負けにしておきましょう。
    主と言っても借り物です。知りたければ教えましょう!」

    「いや、いい」

    「そんな!」

    あっさりとオリビアに断られ、烏瑪はなすすべもなくなってしまった。
    そこへ、ティレイサ姫と一緒にレッチェが戻って来た。

    「あれ、何してんの?おじさん」

    「くっ!またあの時の坊ちゃんか!」

    「姫」

    「は、はい!」

    オリビアはティレイサに告げる。

    「レディアと紅、そしてテオルと一緒に表の馬車で待っていてくれ」

    「ええ!?ボクも残りたい!」

    「紅、わがまま言わないの」

    「ぶー!」

    「私が先導しましょう。マスター、ご無事で」

    「ああ」

    言うなり、テオルは先に行ってしまった。
    ティレイサも促されるが、その前にレッチェに向き直る。

    「レッチェ」

    「ティレイサ、後は任せて。心配いらない」

    「ご武運を」

    ティレイサはレッチェの手を取り、ぎゅっと握る。

    「さ、行きましょう。ティレイサ」

    「はい!」

    ティレイサはレッチェの手を離し、時折振り返りながら表への道を進んでいく。
    「では、私もそろそろ…」

    「……」

    烏瑪も、ついでに部屋を出ていった。


     

     

     

     

    「ねえ、レディア」

    「なあに?」

    「さっきの、オリビアの。カルテアのって、おじさん言ってたけど。あれって…?」

    「紅」

    「うん?」

    「勉強しに来てるんでしょう?」

    レディアは少し困ったように。でもすぐ戻り、にっこりと紅に言ってやる。

    「あー!レディアも、オリビアと同じ事言う!」

    「ふふ。さ、行きましょう!」

     




     

    そうして、オリビアとレッチェが残された。

    「分かっていると思うがここは人の屋敷だ」

    「それが?」

    「大人しく暴れることだ」

    ふん」

    素直には従わないレッチェだが、情報だけは伝える。

    「ディレーには、ヴァレッタという金髪をカールボブにした女の人がいる。
    魔人力の持ち主。その人が、ディレーを操ってる」

    「そうか

    オリビアは屋敷の気配に気を配った。

    「まだ使用人達もいる」

    「分かってるよ」

    レッチェは手を曲げ伸ばす。
    2人は客間を後にして、真っすぐにディレーとヴァレッタの方へと向かった。

     

     

     

     

     

    13話。

     

     

     

     

     

     

    「ねえ、ディレー。私を見て。私の事を」

    「ヴァレッタ…」

    「ディレー。私の事をよく見て」

    「ヴァレッタ…」

    椅子に座ったままのディレーにヴァレッタがしなだれかかっている。

    傍から見れば愛し合う2人の様だが。

    「うえ」

    「よせ」

    人の声がした方を、ヴァレッタが忌々し気に見つめる。

    「また、お坊ちゃんかい。それに…」

    オリビアは告げる。

    「その男から離れてもらおうか」

    「ふ、どうしてだい?」

    「君のその魔人力の力を使うのをやめてもらいたい」

    「…ふ」

    ヴァレッタはディレーから身を起した。

    「無粋な男だね。これは魔人力とは関係のないものさ」

    「ディレーには、他に想う人がいるんじゃない?」

    「小僧…」

    ヴァレッタは顔をゆがめる。

    「あんたたちが、小娘の護衛と言うわけか。

    人のモノに手を出そうとする薄汚い小娘の…」

    「…ディレーを正気にもどして欲しい。そして、あなたも手を引いて欲しい」

    レッチェの物言いが気に入らないのか、さらにヴァレッタは顔をゆがめる。

    「偉そうに言うんじゃないよ。小僧…ディレーは私が見つけた、私のモノだ。

    他の女に渡すものか」

    「…ディレーは」

    「私のモノだ!」

    「ぐうう」

    ヴァレッタが叫ぶなり、ディレーは苦しみだす。そのうちに目が狂気に満ちてくる。

    「!」

    「仕方がない」

    オリビアは足をトントンと地面につける。が、部屋の外からも、ただならぬ人の気配がしてくる。

    「ふふ。どうするんだい?」

    「使用人達か…」

    ヴァレッタに操られている屋敷の使用人達もぞろぞろと部屋へと集まってきた。

    「魔人力…女の人と戦うのは嫌だな」

    そう言いつつも、レッチェはヴァレッタかディレー、

    そして使用人の相手をするか見定めている。

    「なら、使用人の相手をしてやれ。傷つけないようにな」

    「…ふん」

    レッチェはヴァレッタと戦うよりも、使用人をいさめる方を取った。

    そうと決まると、行動は素早い。アンティーダガーを取り、

    その柄を持って、使用人達の方へ走った。合計で7〜8人。

    使用人達の足をトンッと止めていく。

    「ち。烏瑪では役に立たないはずだよ」

    「ディレーを解放しろ」

    「お断りだよ」

    「そうか…」

    オリビアは目の前に立ちふさがるディレーを、躊躇なく蹴り倒した。

    「ぐあ!」

    「すまないが、寝ていてくれ」

    「ディレー!」

    ヴァレッタはディレーに駆け寄ろうとするも、オリビアに捕らえられる。

    「くっ」

    「悪いが容赦はしない。君も同じだ」

    オリビアに捕らえられたヴァレッタは、オリビアの瞳を捉え、腕を逆に掴んだ。

    「坊や。私に逆らうとどうなるか。見せてあげよう」

    「!」

    オリビアとヴァレッタ、ディレーが居る部屋の明かりが、輝きという輝き。

    息吹が消える。暗闇はやがて赤黒く染まり、小さな隙間も通さない、

    冷たく鋭いヴァレッタの視野と声だけが存在する。

    (空気が)

    オリビアはその空間に捕らえられ、息をすることも出来ない。

    暗闇では何も見ることが出来ない。皮膚を突き刺す鋭い痛み。

    それだけが感じることが出来ることだ。

    1分も経っていないその間、オリビアはヴァレッタの鋭い、刃に捕らえられた。

    「どうだい坊や。ディレーを諦めてお家に帰るかい?もっとも、もう帰さないがね」

    オリビアの意識が遠のきそうになる中。

    「オリビア!」

    「!」

    レッチェの声が耳を突き刺す。

    オリビアは自分を掴んでいるはずのヴァレッタの腕を捻り上げ、引きずり倒した。

    「ぎゃああ!」

    ヴァレッタは悲鳴を上げ、そのままねじ伏せられた。

    空間は暗闇が消え、部屋は元の明かりを取り戻し、息吹が戻る。

    「オリビア。大丈夫か?」

    「ああ」

    ヴァレッタの鋭い刃は、オリビアの身体から血を滴らせていた。

    しかし致命傷ではなく、感覚が戻ったオリビアは平然そうにレッチェに返答した。

    「うう…」

    ヴァレッタの魔人力が解け、ディレーが目を覚ました。そしてヴァレッタを見る。

    「君は…」

    「ディレー!私だよ、覚えていないのかい!」

    「君は誰だ?」

    「ディレー!ぐっ」

    オリビアに押さえつけられているヴァレッタは、意識をオリビアに向ける。

    もう一度魔人力を使おうとしている。

    「無駄だ」

    オリビアはヴァレッタの魔人力を、ほんの少しの魔法で封じてしまった。

    「!な、何!?何だ!?何をした!!」

    「これは秘密なんだが。少しばかり魔法が使えてね。力を封じさせてもらった」

    「な、何を!!」

    「それって本当に解けないものなの?」

    レッチェが訝しそうに聞く。

    「ああ」

    (カルテアの人間以外にはな)

    「そう」

    「君…」

    戦意を失ったヴァレッタに、ディレーが声をかけた。

    「君の事を覚えていなくてすまない」

    「ディレー…」

    使用人達も意識を取り戻し、ヴァレッタは捕らえられた。

     

    「オリビア!」

    屋敷から出てきたのはオリビアと、レッチェ。そしてディレー。

    レディアはオリビアに駆け寄った。

    「大丈夫!?ああ、血が…!」

    「なんてことは無い」

    「待って、今癒してあげる」

    レディアはオリビアの胸にそっと手を当てて、集中した。

    レガント星の力が湧き上がってくる。レディアがオリビアの傷を癒している間に、

    レッチェとディレーはティレイサの元へ。

    「ティレイサ姫!」

    「ディレー様。…レッチェ」

    レッチェはそっけない態度で、ティレイサを横切り、テオルと紅の元へ。

    ディレーは姫の側にいる。

    「姫。ご無事でしたか」

    「ええ。私は…。ディレー様は…」

    「私は大丈夫です。それより姫…」

    2人は少しばかりのたわいもない、そしていたわりの話をしている。

    馬車の中で退屈そうに待っていた紅は、今にも飛び出しそうだ。

    「それで、どうだったの?ねえ、ディレーさんは?魔人力の人は…?」

    「それは帰りに話すよ」

    「ええ!そんなあ!」

    紅は今にもわめかんばかりだった。

    「みなさん」

    「はい!はーい!ティレイサ姫!」

    紅はついに馬車から飛び出し、ティレイサの前へと出る。

    「紅さん。みなさん。本当にありがとう…」

    「えへへ」

    紅はティレイサを笑顔で返し。

    「姫。ご依頼ありがとう!」

    ティレイサは紅にぎゅっと抱き着いた。

     

     

     

     

    エピローグ

     

     

     

    レガント星の熱帯地域に、ファナイリファビリティーに所属するギルドの1つ、

    SECHS(ゼックス)の家がある。

    今日も深夜と言える朝早くから起きて、訓練を理由に出かけていたレッチェが、

    ようやく帰ってきた頃、紅は愛猫のクロにリビングで餌をあげていた。

    「お帰り―!」

    「…ただいま」

    朝からハイテンションの紅を見て、レッチェは信じられないといった風。

    「あら、お帰りなさい!ふふ、眠いんじゃない?」

    カウンターキッチンから顔を覗かせるレディアは、

    あくびを噛み殺したレッチェを見て、おかしそうに言った。

    「ほら、起きてください。マスター」

    「眠い…」

    別段夜更かししたわけでもないオリビアの方が、よっぽど眠そうにも見える。

    レッチェは手に持っているものをヒラヒラとさせた。

    「何それ!」

    「手紙だよ。ティレイサから」

    紅の問いにすっと答えたレッチェだが、中々読ませてくれない。

    「本当!?」

    「見せてよー!」

    少し紅をからかった後、レッチェは封を切った。

     

     

     

    「拝啓

     

     

     紅さん。レディアさん。オリビアさん。テオルさん。レッチェさん。

    お元気にしておられますか?私はいつだって元気です。

    このところ、城では春のあたたかな風が吹いてきています。

    この度、私はディレー様と結婚することになりました。

    SECHSの皆さんがめぐり合わせをしてくださったお陰だと思っています。

    私は皆さんにお会いできた時、無茶だと思うことも、

    信じて突き進めば、きっといい結果が得られると、教えてもらったように思います。

    本当にお世話になりました。

    皆さんも、どうぞお身体に気を付けて。より一層のご活躍を願っています。

     

    また皆さまにお会いできる日を楽しみにしております。

     

                                     ティレイサより」

     

    「わー!お姫様、結婚するんだね!!」

    「ねー!素敵!」

    紅とレディアはきゃーきゃー言って飛び跳ねている。

    「そうか…ふあ…」

    「マスター。今日は二度寝してはいけませんよ」

    手紙を読み終えたレッチェは、レディアにそのまま渡した。

    「あら。…大事なBOXに入れておくわね」

    「ねー!」

    にっこにこの2人をよそに、レッチェは着替えに部屋へと戻ろうとする。

    「もう朝食よ!」

    「わかったよ」

    「そのまま寝ちゃだめよ。ちゃーんと朝ご飯食べるのよ!」

    「はーい」

    (幸せにね。ティレイサ)

    レッチェはレディアの言うままに、渋々だが、着替えてリビングへと戻って来た。

    「じゃあ、いただきます!」

    「いただきます」

    それぞれの忙しい1日が始まる。今日はどんな依頼が舞い込んでくるのだろう。



     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

               プリンセス・ティレイサ篇 完

     

     

     

     

     
     
     

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